売れるデザインってどんなもの?

喉が渇いてコンビニに入った時、あなたが思わず手に取るモノは何ですか?

たくさん並んだお水やお茶のペットボトルの棚から、何を選びますか?

あるビールのマーケティング調査で、パッケージを見せずに数社のブランドを試飲してもらって一番美味しいものを選んでもらうと、パッケージ”あり“だと自分のいつも飲んでいるひいきのブランドを選ぶのに、パッケージ“なし“だと、全然違うブランドを選ぶ人が何人もいたそうです。

お酒はからきし弱い私にはビールの味の違いはさっぱりわかりませんが、お茶やお水のペットボトルを買う時は、パッケージデザインで選ぶ傾向があります。

職業柄というのもありますが、味がそんなに変わらないのであれば、デザインがステキな方を選ぶことが多いです。
(もちろん、「コレが飲みたい」という時は、パッケージがダサかろうが、値段がステキじゃなかろうが、迷わずそれを買いますが。)

この調査からもわかるように、パッケージ=パっと見の印象(第一印象) が人に与える影響はとても大きく、それは時に中身の印象まで変えてしまうことさえありえます。

この“パっと見の印象”をつくるのがデザインです。

マズイものをおいしく変える魔法ではありませんが、商品力や価値を高める力がデザインにはあります。

ステキなデザインは、「見る」という瞬間の動作だけで、人の心をつかみ、好感を抱いてもらうというアドバンテージを手に入れることができたりするのです。

商品やサービスが優れていても見た目でお客さんをつかむことができなければ、手にとってもらうことさえない可能性がある一方で、サービスや商品が優れているのであれば、デザインを変えるだけで市場が何倍にも増える可能性があります。

 

ところで、デザインには正解はありません。

100の商品があれば100通りの答えがあり、同じ業種でも同じカテゴリの商品でもアウトプットはいつも違います。どの仕事も同じ方法論ではつくっていません。

もちろん、正しい方向性というのはあります。

たとえば、ビールであればシズル感が大事、病院やクリニックであれば清潔感が大事など、何らかの意図や狙いがなければ、ハズすことはない基本的な方向性といえます。

しかし、正しいやり方というのはそもそも多くの企業がすでにやっているので、ブランディングデザインにおけるアウトプットでは、どれだけ “ほかと違うか”“ほかよりユニークか”、という点が重要になってくるのです。

また、正しいだけのものというのは得てして面白くはありません。

人がモノを買う直接的な動機は、「心が動くこと」であると言われています。

そして、人の心を動かすのは、

“驚き”  “発見”  “興味”  “共感”  “感動”

これら5つの感情感覚です。

「面白い!」「すごい!」という “驚き“
「これは便利!」「なるほど!」という “発見“
「これって本当?」「どれどれ?」という “興味“
「わかる!」「そうそう!」という “共感“
「かわいい!」「ステキ!」という “感動“

もれなくエクスクラメーションマークがついてきます(笑)。

このように感情を揺さぶられることで、人はその商品やサービスの購入を決定し、その感情がつよければつよいほど、あるいはその繰り返し(継続)によってその商品やサービスのファンになるのですから、ただデザイン的、マーケティング的に正しいだけでは、人は魅力を感じないということです。

むしろ、正しいかどうかはわからないけれど、いや、もしかしたら間違っているかもしれないけど、

「有無を言わさず面白いもの」
「パワーがあるもの」

こういったものが、時に爆発的なヒット商品になったりします。

決して好みではないのに思わずクギ付けになるもの、共感はないけれど「天晴れ」と言いたくなるもの。上記の感情で言えば、“驚き” や “感動” を生むものと言えます。

ただし、それが=(イコール)ブランドになるかというと決してそうではなく、一時的に売れたり話題になったりはしますが、それがたまたままぐれで当たった企画であった場合、あっと言う間に市場から消えてしまうのはいうまでもありません。

売れ続ける、選ばれ続けるには、やはりブランディング戦略は不可欠といえます。

 

さて、話が少し逸れてしまいました。
軌道修正します。

 

たとえば、あなたが新しく和菓子屋さんをはじめたとします。

味のレベルも価格もそう変わらないのだけど、隣町にある老舗の羊羹ではなく、自分のお店の羊羹を買ってもらうために、あなたは何をしますか?

価格を安く設定する?

それでは、もっと安い羊羹を売るお店が出てきた時に、あっという間に行き詰まってしまいます。

“おまけ” をつける?

それもよいかもしれませんが、コストに見合うリターンはあるでしょうか。
また、お客さんの心を掴む魅力的な “おまけ” でなければまったく意味がないので、そこそこハードルは高いと言えます。

口コミを狙って変化球羊羹をつくる?

それもなかなかよいかもしれません。たとえば、「タピオカ入り羊羹」や「フルーツ羊羹」etc…考えること自体が楽しいですし、当たれば大きいかもしれませんが、先ほど述べたように、それだけでは売れ続けることは難しいと言えます。

いろいろなアイデアが出てくると思いますが、いずれにしても、老舗の羊羹にはない “何か” 、思わず手にとってしまう “何か” を提示しなければならないわけです。

もちろん、老舗の羊羹よりおいしくなるよう企業努力が必要ということはいうまでもなく、その上でさらに+α(プラスアルファ)を考えなければならないわけです。

+α(プラスアルファ)=付加価値というやつです。

それは “おまけ” でも “変化球” でもよいのですが、商品そのものやお店そのものの価値を上げ、長期的なリソースとなる方法を採用した方が、より大きなリターンが約束されるはずです。

 

羊羹を売る

 

ブランディングを語る時、もはやてっぱんといえるアップルのエピソード。

Thik different.」の記事で書きましたが、アップルの商品は決して安いわけではなく、ずば抜けて高スペックというわけでもないにも関わらず、多くのファンに愛され、新しい商品が出るたびに話題になりますよね。

アップルが圧倒的なブランド力を発揮することができているのは、見え方を徹底的にコントロールしているからですが、それによって消費者はアップルに対して「デザインが洗練されている」というイメージを抱き、ファンになるのです。

>Thik different.

商品そのものはもとより、それを購入することによって得られる満足感や、「これを買ったらきっといろんな楽しいことがあるだろう」というような予感や期待をさせるストーリー、また、そのブランドのスタイル(世界観)を共有することができるという目に見えない無形の価値にお客さんはお金を払います。

つまり、価値をしっかりと提示できれば、価格が高くても豊かなモノ、本当によいモノに人は集まるということです。

そこで、+α(付加価値)を意図して設計していくことが必要になってくるのですが、その付加価値づくりにおいてデザインの力は欠かせません。

なぜなら、あなたの商品やサービスが “誰にとって価値があるか” を伝える手段がブランディングデザインだからです。

 

情報伝達の多くは視覚を介して行われるという調査結果があります。

(『産業教育機器システム便覧』によると、五感による知覚の割合として視覚情報は83%を占めているとされています。)

つまり、商品そのもののデザインはもちろん、パッケージや広告、カタログなどの視覚デザインは、購買行動に大きな影響をもたらすということです。

この視覚デザインが、お客さんが目にする、あるいは触れるあらゆるタッチポイント、羊羹の梱包であったり、店舗のデザインであったり、広告やWebサイト、従業員の服装や立ち居振る舞いに至るまで、お店が発信するすべてのイメージ媒体においてコントロールできた時、そのブランドのスタイルとなるわけです。

価格や性能といった目に見えるもの、比較できるものは、優位性をもたらしますが、容易に他社がマネをすることができます。

一方、スタイルの確立は、見えない(比較できない)優位性をもたらし、他社がマネをしようにもなかなか難しいため、長期的な差別化要因となります。

つまり、視覚デザインによってスタイルが確立できれば、隣町の老舗の和菓子屋さんの “老舗である” というアドバンテージを上回る価値を得ることが可能なのです。

 

冒頭に書いたように、デザインは商品力やサービス力を上げ、顧客ニーズを掴むことができるので、商品やサービスが優れていれば、ターゲットに合わせた見た目に整えるだけで、豊富なリターンが期待できるのです。

そして、デザインで価値を上げるということは、商品を購入することで、「ほしいものにめぐりあえた!」「やっと手に入れられた!」というお客さんの満足感や幸せにもつながるので、リピーターとなるファンを獲得することもできるわけです。

「羊羹もおいしいけれど、それだけじゃない。お店の雰囲気が最高にいいね」
「パッケージがかわいいし、ギフトとしても使える」

そう言ってもらえればしめたものです(笑)。

支払った金額以上の満足を感じてもらうために、お客さんにとってお気に入りとなる商品、サービスをデザインでつくり、提供する、それがブランディングデザインです。

そしてそれは、高い値段でも何度もリピートしてくれるような優良顧客(ファン)をつくるためのツールであり、戦略なのです。

他社との明確な差別化、独自性のある付加価値の高い商品や独創的なサービスに取り組むことが企業にとっても個人にとっても重要な課題とされる今、デザインの果たす役割はますます重視されています。

 

余談ですが、「タピオカ入り羊羹」
思いつきで書いたのですが、気になって検索してみたところ、なんと存在していました。

https://ameblo.jp/ant-e/entry-11269460379.html

商品ではなく料理研究家の方のレシピですが、とてもおいしそう。
これはアリだなと思いました。

 

★こちらの記事もどうぞ