会話のきっかけをつくる名刺 | ブランディング デザイン 制作事例

ブランディング デザインにおいてもっとも大切なのは、ユーザーに何を伝えたいかという「思い」の部分だと私は考えます。

現在、成功している企業や商品・サービスには、必ず根っこの部分につよくて純粋な「思い」があります。

そして、その「思い」をたくさんの人に共感される「価値」にまで高めていることが、愛されるブランドとなる秘訣のひとつです。

ブランディングデザインをめぐる冒険

デザインをする時、私がいつも心がけているのは、その商品やサービスが生まれるきっかけとなった「思い」や、伝えたい「メッセージ」を正しくユーザーに届けること、です。

私の会社はいわゆるデザイン会社ではありますが、デザインではなくコミュニケーションをつくっていると考えています。

人と人、人とモノをつなげるための、大切な思いやメッセージを伝えるためのコミュニケーションをデザインすること。

それが、私の仕事です。

ブランディングとは、本質的には、「人と人とのコミュニケーション活動」です。

「伝えたいこと」「伝えるべきこと」を「伝えたい人」に向けて、魅力的に伝えること、そのために何ができるか、どんなデザインがよいのかを考える、それはコミュニケーションの設計に他なりません。

 

さて、これは、私が最初につくった会社「Imaginairum(イマジナリウム)」の名刺です。

Imaginarium名刺

「この形には何か意味がありますか?」とよく尋ねられます。

もちろん、これは、そう質問されることを狙ってつくりました

実際のところ、この形そのものにはまったく意味がありません。

社名の「イマジナリウム」は造語ですが、

imagination〈イマジネーション〉+rium〈〜に関するもの、〜のための場所〉
「イマジネーションが生まれる場所」

という意味を持たせました。

名刺を受け取った時、相手のひとは「これは何の形だろう?」と思います。

そして「雲かな?」「空豆かな?」「いや、ひょうたんかな?」
などと考えたりします。

その瞬間、そこにイマジネーションが生まれます。

つまりそこが「イマジネーションが生まれる場所」となるわけです。

と、このようなコミュニケーションを考えてつくりました

時々、この形に面白い意味づけをしてくれる想像力豊かなクライアントさんもいて、さらにイマジネーションがひろがっていく嬉しい展開もあったりします。

名刺をつくる時、
「会話のきっかけをつくるもの」
というのをまずテーマに考えました。

インパクトを与えるアイデアは幾つも浮かんだのですが、ただインパクトを与えるのではなく、クリエイティブカンパニーらしいコミュニケーションをつくりたいと思いました。

また、受け取った相手が持て余してしまわないよう、名刺ケースに収まる一般的なサイズ(91×55mm)の範囲内でつくるというルールを設けて、試行錯誤の結果この形となりました。

ただこれは、じゃっかん説明が必要なことと、クリエイティビティのある相手でないと、まったく理解されないのが難点です。

お堅い職業の人の場合、100%の確率でスルーされます。

一瞥されただけで名刺ケースにしまわれることがほとんどで、奇跡的に「この形は?」と聞かれ、意気揚々と説明しても、ポカンとされるのがオチです。

いずれにしても、コンセプトを説明すること自体が粋ではないなと思ったので、次はもっとシンプルで直感的に面白いものを考えたいです。

 

名刺は相手へのラブレター

ちょっと前になりますが、「義母と娘のブルース」というTVドラマが好きで、毎週かかさず見ていたのですが、その最終回で、パン屋でバイトを始めた娘が、キャリアウーマンの義母に名刺を差し出した時、手書きで書かれた“新米”という肩書き(役職)に対して、義母が言ったセリフがコレ。

「『パン屋なのに新米とはこれいかに』と営業トークのマクラとしても使えます」

 

義母と娘のブルース<出典:http://www.tbs.co.jp/gibomusu_blues/>

営業トークのマクラ=会話のきっかけ(つかみ)です。

こんなふうに肩書きが変わっていたり、珍しい名前だったり、太っているのに細井さんとか、ヤマダ電機の山田さんとか、突っ込める要素があったりすると、そこからコミュニケーションが生まれます。

いただいた名刺からちょっとしたトークが生まれた時は、そうではない時と比べて、相手との距離がぐっと縮まるように思いませんか。

しかし、突っ込まれる要素=フックとなるものが天然にあるという恵まれた名前や肩書きはそうそうありません。

相手の手に渡った後、名刺ケースやファイルにしまわれ、その他たくさんの名刺に埋もれてしまうことなく、相手に印象を与えることができる名刺はないものか??

これは、起業を志し一度でも自分で名刺をつくったことがあるならば、考えたことがある人が多いのではないかと思います。

名刺については、いろんな本がでています。名刺コンサルタントなる肩書きの人もいるので、おそらくそうした需要は多いのだと思われます。

自分でビジネスをされている人で多いのは、顔写真や似顔絵などのイラストを入れたものや、つよみをキャッチコピーで入れたものなどでしょうか。

二つ折り、三つ折り、ジャバラ折りの冊子型の名刺に、事業領域にとどまらず、趣味や特技から自分の生い立ちまで表裏びっしりその人の情報を詰め込んだ名刺をいただくこともよくあります。

内容は個々人で違うのだけど、構成要素や醸し出すものは同じで、個性を出そうとして作ったものでも、他の人も同じことをやっているので、結局没個性となってしまっている。。。そんな気がしないでもないです。

たぶんマーケティングに基づいてつくられているのだとは思われるのですが、(実際、そういう名刺をすすめる本もあったりします)
初対面で渡される名刺に、その人についての情報満載てんこ盛りなのは、売り込まれている、押しつけられているイメージがあって、私はどうしても引いてしまうのです。あくまで個人的な感想ですが。

 

名刺はもちろん、ショップカードや紙袋、会社封筒、パンフレット、カタログ、広告、Webサイトなど、あらゆるツールがユーザーとのタッチポイント(接点)となるので、このトンマナを統一することはブランディングの基本となります。

それらが統一されたイメージでユーザーに受け取られ認知された時、はじめてそれはブランドとなります。

たかが名刺、されど名刺。あなどるなかれ、です。

名刺は、多くの場面で一番はじめに相手に届くものであり、自分の代わりにずっと相手のそばに存在するものなので、ぬかりなくいきたいものです。

 

『人は見た目が9割」という本がだいぶ前にヒットしましたが、相手に与えるファーストインプレッションがとても重要であることは、今やビジネスにおいては常識となっているのかもしれません。

名刺も同様です。

スピート名刺でつくりました的な、よくあるビジネス名刺であなたの個性や魅力は伝わるでしょうか。

商品がどんなによくても、どんなに素敵なサービスを提供していても、名刺のデザインがちょっと野暮ったかったり、用紙が安っぽかったりすると、すごく残念だと思います。

私も名刺デザインを仕事でやっていますが、限られたスペースでセンスよくメッセージを伝えることは、なかなか難しいことではあります。

でも、この小さな紙切れがあなたの思いやメッセージを伝えてくれるラブレターだと考えると、何を書こうか、どんな形にしようか、用紙はどんな風合いがいいか、また、受け取った時の相手の顔を想像してみたり、なんだかわくわくしますよね。

使い方ひとつで強力なコミュニケーションツールになる名刺、これからもいろんなアプローチを考えてみたいと思います。

 

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